発熱ユニット発電給湯システム
発熱ユニット発電給湯システム画像

 発熱ユニット発電給湯システムは、発熱ユニットが二酸化炭素を一切出さず自立で700℃の熱を発生し、この熱で熱電発電モジュールが1kWを発電し、同時に給湯タンクを加熱してお湯を作るシステムです。

 起動時に1.4kWの電力を1時間30分程度消費しますが、起動後は外部からのエネルギーが一切不要で発電と給湯を続けます。一日で24kWhの電気を発電し、お湯を沸かし台所、風呂、洗面台の温水に利用でき、この温水を暖房にも利用できます。

 一般家庭での一日の消費電力は、IHヒーターを利用する世帯でも10kWh程度で、残りの14kWhは電気自動車の充電または売電に利用することができます。

 発熱ユニット発電給湯システムの発電が1kWですが、これを超える当システムの起動時やIHヒーター、エアコン・クーラーなど大容量の電気を利用する場合があります。この場合は、家庭用蓄電池を設備しこれに貯めた電気を利用するか、電力ネットワークから供給されている電気を利用します。

 発熱ユニット発電給湯システムを日本の全世帯の50%でこれを利用することにより、年間電力量2,534億kWhを発電することになります。日本のすべての電気自動車に必要な電気は年間電力量2,247億kWhで、これを超える発電量となります。

 発熱ユニット発電給湯システムの利用で、家庭や自動車からの二酸化炭素の排出を大幅に削減できます。


 以下にSOFC発熱量、発熱ユニット原理、発熱ユニット発電給湯システムの順に説明します。


SOFC発熱量

SOFC試験セル画像

 NTT環境エネルギー研究所の文献『高効率な個体酸化物形燃料電池平板セルの開発』での実験では、直径『6㎝』の電解質の厚さ『20μm』の丸型のセルに『0.5L/min』の水素を流した時、平板セルの温度が『800℃』で約『1.5W/cm2(0.7V)』の電気を発生しています。


 SOFCは、電解質内部での酸素イオン(O2-)の移動があり動作温度800℃を発生しています。この時の平板セルの電解質が発生している熱量は、次の式で求められます。

 

  3㎝×3㎝×3.14×0.002㎝×1.05(比熱)×2.5(比重)×800℃×4.184≒496J

   ※4.184;calからJへ変換(1cal=4.184J)


 ここで発電している水素の燃やした時の発熱量は、毎秒の水素の使用量から下記の式で96Jとなり、これに対し平板セルの電解質が発生している熱量の496Jは5倍以上の大きな熱が発生していることとなります。

 なお、燃料電池の発電効率は、一般的に30%~70%と言われていますが下記のとおり発電量42J/s のため発電効率は43%で理論に近い値となっています。


   0.5(L)/60(秒)×0.081=0.000675g (水素の比重;0.081kg/m3=0.081g/L)

   水素の燃やした時の発熱量;0.000675g×141.8kJ/g(HHV)×1000≒96J/s

   発電量;3 cm×3 cm×3.14×1.5 W/cm2=42J/s

   発電効率;42/96=43%


 SOEC(固体酸化物形電解セル)も電解質内部における酸素イオン(O2-)伝導があり同じ原理で、稼働時に大きな熱が発生しています。


発熱ユニット

発熱ユニット原理

 発熱ユニット(特許第5829325号「発熱ユニット及び給湯システム」)は、水素と酸素で電気と水を作るSOFC(固体酸化物形燃料電池)と、水を電気分解して水素と酸素を作るSOEC(固体酸化物形電解セル)を組み合わせて同時に動作させ熱を発生させる装置です。SOFC、SOECのそれぞれの水素が通る管、酸素が通る管をつなぎ一体化したのが発熱ユニットです。

発熱ユニット画像

 発熱ユニットの製品化はされていませんが、SOFC、SOECはマグネクス株式会社で製造しているG20(外形寸法 縦150mm×横150mm×高さ135mm)を使用して作ることができます。


 発熱ユニット原理を次のビデオでご覧ください。




発熱ユニット発電給湯システム

発熱ユニット発電給湯システム説明画像  

 発熱ユニット発電給湯システムは、主な部品として①発熱ユニット、②熱電発電モジュール、③給湯タンク、④制御装置、⑤動作表示器、⑥給水装置、⑦蒸発器、⑧起動用ヒーターがあります。


 これら部品の詳細は以下のとおりです。


①発熱ユニット

発熱ユニット画像

 発熱ユニットは、マグネクス株式会社製のG20仕様のSOFCとSOECを組み合わせ一体化したものとします。

 G20の仕様が、セルの大きさ縦11cm、横11cm、電解質の厚さ3μmで電解質のイットリア安定化ジルコニア(YSZ)の比熱0.47kJ/(kg・K)、かさ比重6.0 g/cm3のため、SOFC 20セル、SOEC 20セル合わせて40セルが作る熱量は次の計算で25,480Jとなります。

  11㎝×11㎝×0.0003㎝×0.47(比熱)×6(比重)×700℃×4.184≒637J

   ※4.184;calからJへ変換(1cal=4.184J)

  637J×40セル=25,480J

 他のSOFC発電の例では発生する熱の3割程度を改質などに利用しています。この例から25,480J の3割の7,644Jの熱が利用できることになります。

 日本の世帯数は、5,907万世帯で、発熱ユニット発電給湯システムを全世帯で利用することによる熱量を発電量に変換すると39,554億kWh(7.644×24×365×59,070,000)となります。これは、日本の二酸化炭素排出量1,138百万トンの電力換算では20,680億kWhとなり、これを超えることから二酸化炭素排出削減策の中で最も大きな効果が期待できます。

②熱電発電モジュール

熱電発電モジュール

 熱電発電モジュールは、ヤマハ株式会社製のYGPX024(外形寸法 縦103mm×横143mm×高さ2.1mm)を8個利用します。

 熱電発電モジュールは、温度差385℃で143Wの発電する能力があり、これを8個使うため1,143Wの発電となります。

 発熱ユニットのSOFC発電、SOEC電気分解のロス分19%の補充電力が138W必要で、これに該当する分を消費のため、残りの約1kWが屋内の電化製品の消費電力として利用できます。

③給湯タンク

 給湯タンクは、容量150ℓで、発熱ユニットの余熱を使って給湯タンクを加熱します。

④制御装置

 制御装置は、起動時の起動用ヒーターの加熱、起動後の起動用ヒーターの加熱停止と熱電発電モジュールへの交換制御を行います。SOFCの発電状況、SOECの電解状況を管理し、発熱ユニットの正常動作を維持する制御を行います。SOECへの給水制御を行います。停止時の電気供給停止の制御と熱電発電モジュールから起動用ヒーターへの交換制御を行います。

⑤動作表示器

 動作表示器は、SOFC、SOEC、起動用ヒーター、給水装置の動作状況を表示します。

⑥給水装置

 給水装置は、発熱ユニット起動時及び稼働時に、SOECに水蒸気を供給するため、水を蒸発器に送る装置で水の供給は制御装置の自動制御により行われます。

⑦蒸発器

 蒸発器は、水を蒸発するための装置で、作られた水蒸気は発熱ユニットの水素を通す管に送られます。

⑧起起動用ヒーター

 起動用ヒーターは、SOFC、SOEC動作温度まで発熱ユニット全体を加熱するために使います。容量は1.4kWで加熱に1時間30分程度かかります。発熱ユニットが動作開始後は停止します。


『引用』著作物掲載URL

『高効率な固体酸化物形燃料電池平板セルの開発』https://www.ntt.co.jp/journal/0712/files/jn200712020.pdf

『マグネクス株式会社SOFC/SOECスタック』https://www.magnex.co.jp/stack.html

『ヤマハ株式会社YGPX024』https://www.yamaha.com/ja/news_release/2021/21030401/

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